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富士ケ嶺公園
みんなの努力でこんな素敵な公園になりました

今はもう吸収合併によって消滅しましたが、かつて山梨県の富士山の麓に上九一色村という地がありました。小学生の頃地図帳でこの村を見つけて、その字面や音感から、ビビッと印象に残ったことを覚えています。「いつか行ってみたいぜ上九一色村」なんて思っていました。

当時小学生の私が上九一色村に憧れていたそのほんの数年前、ここにはオウム真理教の施設、「サティアン」が存在していました。そこは信者の宿泊施設として利用されていただけでなく、まさにサリンの製造工場、そしていくつかの死亡事件・殺人事件が起きた現場でもあります。

そんなサティアン跡地の今を見てきました。

素敵な自然と悲惨な歴史

富士ケ嶺公園の風景
特に遊具などはないけど、この原っぱだけでも気持ち良い

ここは富士ケ嶺公園です。周囲は牧場ばかりの風光明媚な土地。遠くに見える山々と、吹き抜ける風が気持ち良い素晴らしい公園です。

近くにある牧場
周辺は牧場ばかり

先の通り、オウム真理教の施設は「サティアン」と呼ばれ、上九一色村を中心に点在していました。ちなみにサティアンとはサンスクリット語で「真理」を意味しているようです。

ピースポール
こんなところにもピースポール

この富士ケ嶺公園には第2サティアン、第3サティアンがあったそうです。

慰霊碑
まさにここが事件の現場だったとは思えないのどかさ

この内第2サティアンでは記録に残っている殺人事件が2件起きています。どちらも元信者・信者を監禁し、殺害したものです。

また、第2サティアンの地下にはマイクロ波焼却炉、「勝利者」があり、殺害後の遺体を焼却したと言われています。いやほんとまぁやればできるもんなのかもしれないけど、サリンと言い、科学力がすごい。恐ろしい。

慰霊碑
刻まれたのは三文字だけだけど、とても重みがある

というわけでこちらが慰霊碑です。「オウム被害者」など、何の慰霊碑なのか明確に示す言葉はありません。言葉を直接残したい気持ちと、残したくない気持ちの葛藤があったんだろうなと思います。

オウムを金で払拭したガリバー王国の今

サティアン周辺地域を空から見る
富士急ハイランドのさらに奥

さて、この地にはもう1つなんとも言い難い歴史があります。

一連の事件によって上九一色村周辺には暗い影が落ちます。そんな中、新潟中央銀行がいっちょやったるで、ということで、サティアンが去ってまもない頃、その周辺にガリバー王国というテーマパークを建設します。

これぜひ画像検索して欲しいのですが、巨大なガリバー像が横たわる姿は非常に非日常的で、微妙な気味の悪さを覚えるほどでした。また、新潟中央銀行は他にもロシア村、トルコ村というこれまた王道から少し外れる微妙なテーマパークを建設しました。

しかし、いずれの園も現在までに閉園していて、特にこのガリバー王国なんてのはたったの4年間しか営業できませんでした。まぁそういう曰く付きの土地であるってのも多少はあったんでしょうが、「人目を忍ぶ犯罪団体がアジトに選んだ土地」、つまり周辺に何もない山の中なので、アクセスが最悪すぎたのがその要因だったのでしょう。

ガリバー王国跡地
左側の島でガリバーが寝てた

ガリバー王国はしばらく廃墟化した後、所有者が転々とし、現在はご覧の通り、何もない状態で放置されています。

結局こんなテーマパークがなくても、時間が過ぎたこと、そして犯罪者たちがこの世を去ったことで、悪いイメージは払拭され、静かな土地に戻ったような気がしました。

新興宗教が根付く怖さ

岐阜県の山の中に、仏舎利のような建物があります。その真っ白な見た目と荒廃した有様からか、「ホワイトスラム」と呼ばれ、「新興宗教団体の施設」だとも言われています。しかし実のところ、宗教的な要素を含んでいるが新興宗教団体ではなく、観光施設だったようです。

それが廃墟化し、あくまで100%想像ですが、その異様な見た目からいつしか「オウムのような異質な宗教団体のアジト」という尾ひれがついていったんだと思います。「新興宗教」という言葉に対して日本全体で見る目・印象が変わっていったんでしょうね。